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2021年9月7日

健康経営とは?その必要性・メリットとあるべき真の姿

「24時間戦えますか…?」かつて一世を風靡したCMワードが示すように、1980年代後半から90年代初頭にかけて、日本人は「世界一長時間働く民族」だと言われてきましたが、バブル崩壊やリーマンショックなどを経て、長時間勤務はもはや“美徳”ではなくなりました。
そして今では、作業効率や労務環境の向上などによって労働時間を短縮し、従業員の健康状態を良好に保つ方が経営面において大きな成果が期待できる、という考えに基づいた「健康経営」に注目が集まっています。

本記事では、健康経営の基本概念とその必要性、そしてメリットを一定の成果を上げている具体的事例を交えて解説します。

健康経営とは?その必要性・メリットとあるべき真の姿

健康経営とは「働き方改革」の一種である

健康経営とは、従業員の健康管理・増進を企業としての戦略に位置づけ、その実践によって人的生産性の向上を図ろうとする経営手法のことで、アメリカの心理学・経営学者であるロバート・H・ローゼンが、1992年に自著の中で提唱したことが始まりだとされています。

この概念が誕生した頃、日本ではバブルが崩壊し、世界的にも市場が急激に冷え込み始め、企業は国内外問わず従来までの大量生産・大量消費から、省エネ・省資源化への転換を迫られていました。

とくに現在、少子・高齢化が急激に進む日本は、欧米の線諸国と比較して労働人口の減少が顕著であるため、企業にとって貴重なエネルギー・資源である従業員を守り、かつ作業効率を上げていかねばなりません。そんな状況を打開すべく、政府が主体となって法律や規制等を整備し、各自治体や企業へ積極的な取り組みを働き掛けてきたのが、労働時間短縮や休日確保などを目的とする「働き方改革」です。

働き方改革によって労働時間短縮や休日確保が実現すれば、企業の従業員は今までより体と心のケアに時間を費やすことができるため、肉体的にも精神的にも健康状態が改善し、しいては人的生産性の向上を目指すことができます。

そう、それこそが健康経営の目的、つまり健康経営の実践は広い意味で言えば働き方改革の一環、もしくは働き方改革関連法を遵守すれば、健康経営に向けたベースを築くことができるのです。

健康経営の実現が企業・組織にもたらすメリット

健康経営の実現に向けた取り組みは、そのまま働き方改革の推進につながるため、企業、組織が得ることのできる恩恵は多岐にわたります。

メリット1 生産性の向上&離職率の低下

長時間労働による肉体的負担や過度なストレスが蓄積すると、病気などを理由に欠勤せざるを得なくなり、否応なく企業としての生産性は減少します。また、病気にかからなくとも、劣悪な労働環境は従業員の士気低下にもつながります。健康経営の基本的な取り組みとして、労働時間短縮や休日確保で作った時間を有効活用する、定期的な健康診断やスポーツなどを推奨することで、従業員の健康状態を維持・増進し労働生産性の向上を図ることができます。

また、厚生労働省の調査によれば、労働環境の劣悪を離職理由に挙げる方が大多数を占めていますが、健康経営によって従業員の肉体的・精神的負担を減らしたり、しっかりメンタルヘルスを管理したりすることで、離職率が低下するメリットも期待できるでしょう。

メリット2 人的リスクを回避・分散できる

いかに労働環境の改善に努めていても、肉体的負担やストレスを感じる度合いは人それぞれです。そのため、多くの従業員を抱えていれば体調や、精神的バランスを崩す従業員も当然出てきます。しかし、健康経営の一環として、定期的に従業員のメディカルチェックやメンタルケアを実施していれば、どのようなケースでどのような従業員が、どういった不調・不安を訴えるかなど、具体的データを管理者が把握することができます。この把握したデータをもとに課題を抽出し、改善策を練ったり、突発的な入院などへの対応を講じたりすることで、人的リスクを回避・分散することができるようになるのです。

メリット3 効果的なブランディング活動になる

誰しもそうだと思いますが、商品やサービスのクオリティーが同じで価格が同程度なら、販売元の企業イメージが良いほうを選ぶものです。そして、健康経営を行い従業員の体を大切に扱っている企業には、

  • 健康経営銘柄・・・経済産業省と東京証券取引所が、健康経営を実施しているなかで特に優れた企業を、上場企業の33の業種から各1社ずつ選定する制度で、2021年度は29業種・48社が選定されています。
  • 健康経営優良法人認定制度・・・健康経営に取り組む企業の「見える化」を進めるため、未上場の企業や医療法人等まで間口を広げ認定する制度で、2021年度は大規模・中小併せて9733法人が認定されています。

といった消費者が目に見える形の「称号」が用意されており、取得できれば売上増加や取引の円滑化につながる、企業としての社会的イメージUPを図ることが可能です。また、対外的イメージUPという「アウターブランディング」だけではなく、従業員に会社のことをもっとよく知り、信頼感や安心感・働きがいを抱いてもらうインナーブランディングにもつながります。

ここまで進んでいる!健康経営への取り組み・具体例

このように、数々のメリットが得られる健康経営は、2009年ごろから大企業を中心に取り組みが進んできましたが、効果が現れるには多少の時間がかかるため、中小企業の中には必要性は感じつつもなかなか実施に踏み切れないこともあるでしょう。そこでこの項では、他の企業に先駆けて取り組みをスタートし、すでに一定の効果が形になりつつある具体例をいくつか紹介いたします。

大手コンビニチェーンの取り組み~株式会社ローソン~

国内第2位のコンビニチェンであるローソンは、「“みんなと暮らすマチ”を幸せに」という企業理念に則り、顧客の健康生活をサポートする存在として、従業員の健康も推進していく方針を打ち出しています。同グループの現社長である竹増氏が、CHO(チーフ・ヘルス・オフィサー)として健康経営実施・強化の先頭に立ち、次のような施策に取り組んでいます。

  • ローソンヘルスケアポイント・・・ローソン健康保険組合と連動し、健康チェックや生活習慣チェックなど、健康増進に役立つタスクをクリアをすると、最大で10000ポイントのポンタポイントを付与するプログラム。
  • 元気チャレンジ・・・社内でチームを編成し歩数を競い合ったり、食事登録などの健康管理を相互におこなったりする健康増進施策。
  • スポーツ大会・・・店舗スタッフから本社従業員や経営陣に至るまで、職域や地位などの隔てなく多くの従業員が参加するスポーツイベント。

その結果、同社は今年までに「健康経営銘柄」に4度選定、「健康経営優良法人」に2度認定されるなど、社内外に向けたブランディングに成功しました。

ヘルスケア企業だからこその施策~オムロン株式会社~

血圧計や体温計など、家庭用・医療現場用健康器具の開発・販売を手掛けるオムロン株式会社は、長年健康に深く携わってきた企業だけあって、かなり早い段階から健康経営に取り組んでいます。具体的には、フレックスタイム制やリモートワークなどの働き方改革を積極的に進めつつ、

  • Boost5・・・健康推進のための具体的かつ共通の指標。「運動・睡眠・メンタルヘルス・食事・タバコ」の5項目について定量的な目標を設定し、達成できている社員を増やしていこうとするプログラム。
  • オムロン ゼロイベント チャレンジ・・・社員が血圧を毎日欠かさず測定し、家庭高血圧の基準値である収縮期血圧135mmHG、拡張期血圧85mmHG未満を目標として、血圧をコントロールすることを目指すプロジェクト。

などを実施するとともに、働く社員の健康こそが経営の基盤と考える「オムロン健康経営宣言」を制定。これらの取り組みが評価され、同社は「健康経営優良法人(ホワイト500)」に5年連続で認定されています。

自治体単位でも推進されている健康経営

健康経営銘柄・健康経営優良法人といった認定制度は国や政府が主体となって進めている制度ですが、都道府県や市町村単位でも健康経営を浸透させるべく、顕彰制度を用意しているところがあります。たとえば神奈川県横浜市では、市内に本社・本店、支社・支店、営業所等があることや、

・法人市民税及び事業所税等を滞納していない
・過去5年間に、重大な事案で労働安全衛生法などの従業員の健康管理に関連する法令等に違反し、処分等を受けたことがない
・暴力団等の反社会勢力に所属せず、これらのものと関係を有していない
・代表者の他に従業員が1名以上いる

に当てはまることを応募条件として、クラスA・AA・AAAの3つの区分からなる「横浜健康経営認証制度」をもうけています。最高位であるクラスAAAに認定されると、「健康経営の取り組みと結果をもとにPDCAを回すことができている」と評価されるため、商品・サービスの販促から人材確保や資金獲得など多方面において、消費者・求職者・投資者などに良い印象を与えるメリットがあります。

また、企業の工場や事業所の多い埼玉県・千葉県・兵庫県・愛知県など、健康経営への取り組みを評価する顕彰制度を用意している自治体は全国各地に多数存在しますので、これから本格的に取り組んでいこうと考えている場合はチェックしておくと良いでしょう。

まとめ~人生100年時代に求められる真の健康経営とは~

今回は、健康経営の概要やメリットなどについて解説しましたが、認証・顕彰制度がどれも1年で更新されていくことでもわかるように、健康経営は単発ではなく、何年も継続して取り組んでいかなければ意味を成しません。今は「人生100年時代」であり、60歳で定年を迎えると考えてもその後の人生の方が長いのですから、平均寿命から衰弱・病気などによる介護期間を差し引いた、「健康寿命」についても就業中からしっかり考えておくべきでしょう。

健康寿命が延びれば、元気にハツラツと自立して生活できる年数が長くなり、社会保障の負担を軽減も期待できますが、就業中あまり健康に気を配らず不規則な生活を続けていると、健康寿命が縮んでしまうというデータもあります。今後の企業は、認証や顕彰を取得して目先のイメージUPを狙うだけではなく、従業員の年齢や性別に合った健康経営をきめ細やかにかつ継続して実施することで、退職後も健康を長く維持できる基盤作りを目指していくべきかもしれません。