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2020年12月8日

貨客混載は配送業務を効率化する切り札となるか?

パソコンやスマホからいつでもどこからでもショッピングができる現代。国土交通省の発表によると、2018年どの宅配便取り扱い個数は43億701万個(うちトラック輸送は42億6061個)、前年より1.3%増加しました。その後もさらに右肩上がりに伸び続け、宅配大手ヤマト運輸が発表した年始から7月までの小口貨物取り扱い実績は684,050,903個で前年比114.4%増。

これら小口貨物の輸送の多くをトラックが占めていますが、荷物の増加とそれに伴う積載量の低下、トラックドライバー不足、人手不足による長時間労働など、配送業界には多くの課題が発生しています。労働環境の改善や業務の効率化、そして何よりもドライバー不足を補うために、ここ数年で活用が広がっているのが貨客混載です。

貨客混載は配送業務を効率化する切り札となるか?

貨客混載とは何か

貨客混載とは、宅配業者がバスや電車、フェリーなどの旅客機と提携して貨物を運ぶこと、または貨物を輸送するトラックなどでヒトを運ぶことを言います。客貨混載と呼ばれる場合もあります。公共交通の空きスペースを活用することで、CO2の削減やコスト削減、物流業者の業務効率化やサービス向上、人材不足の補充などのメリットがあると考えられています。

貨客混載は2010年、環境負荷の低減、都心部における交通渋滞の解消を目的として、札幌市で地下鉄を利用した宅配便の拠点間輸送の実証実験が行われ、そこから徐々に拡大しています。

近年、増え続ける小口貨物に対してドライバーの人手不足が叫ばれる中、今まで旅客と貨物に二分してきた運送事業について政府が見直しを行い、2017年9月より、バスやタクシー、トラックが旅客と貨物を同時に運ぶことができるように規制を緩和しました。これによって、都心部や地方部に関係なく、全国で貨客混載の取り組みが少しずつ広がってきています。

深刻化する人材不足。過疎地では公共交通機関の経営が危ぶまれている

人口減少による人材不足、とくに運送業界ではドライバーの人材不足が慢性化しており、2020年度の有効求人倍率は全職種が平均1.4倍程度なのに対し、トラックドライバーはなんと2.68倍と高水準です。withコロナの時代が続けばネットショッピングによる小口輸送が増え続けると予想されますが、それに伴って発生する再配達なども考慮すると、ドライバーの業務量が増加し、さらなる人材不足が懸念されるでしょう。

また、地方部においては過疎化における人口の減少により、公共交通機関の経営悪化や機能低下が問題となっています。そこで政府は人流と物流のサービスを維持するために、貨物と旅客をそれぞれ機能させるのではなく、混載によって新たな事業の発展、生産性向上を図ろうと考え、地方の公共交通機関に関しては貨物輸送によって収益を安定させること、物流においては、貨物の輸送を公共交通機関に賄ってもらうことで人材不足を補足すること、この2点の課題解決を一度に行うべく、貨客混載に関する規制が緩和したのです。

規制緩和後は、バスやタクシーなどが公共交通機関維持のための新たな収益の方法が増え、移動手段存続、効率的な運用、ドライバーに負担をかけることなく配送業務を補えるなど、多くのメリットがあると考えられており、ますます取り組みが広がることを期待されています。

貨客混載を実施するには〜合わせて考えるべき課題やデメリット

物流業界にとってはまるで救世主のように思える貨客混載ですが、実現に至っては、輸送する貨物の量と公共交通機関の空きスペースがマッチしているか、公共交通事業者と物流事業者の運行方面や時間がマッチするか、貨物の積み降ろしが行える広めのスペースを確保できるか、積み降ろしは誰がどこまで対応するのかなど、制約や条件を整合し、クリアする必要があります。また、これらすべての条件を満たせる路線がなければ、実証実験にまでたどり着くことすらできないのです。

貨客混載はメリットばかりではなく、座席などの旅客スペースが減少すること、ダイヤ改正などの調整、継続的に一定量の貨物がなければ事業継続が難しいなどのデメリットも合わせて考えながら、実現可能な方法を考えなくてはなりません。物流・宅配業者の視点、公共交通機関の視点でそれぞれ必須となる条件を下記にあげてみました。

貨物を運びたい物流業者の視点から考えるべきこと:

  • 大きさ・重さなど含め、総体的にどれくらいの量の貨物を搭載できるか
  • 貨物をどのように固定するのか、またはどのように搭載するのか
  • 貨物積み降ろしのタイミング、場所をどのように設定するか。また、それが安全に実施できるか。
  • 効率化された後の稼働をどのように活用するか
  • バスやタクシー業者へ委託するためのコストなど

公共交通機関の視点から考えるべきこと:

  • 通路や座席数は確保できるか、また、利用者が安全かつ快適な乗降が可能か
  • 貨物積み降ろしのタイミングや場所は旅客の状況や待合に影響がない場所か
  • 荷物の積載による遅延・トラブル発生はないか
  • 将来的に継続できるサービスか
  • 受託を受けることで、公共交通機関の維持や収益向上につながるかなど

また、実現にあたっては、段階ごとに関係者間での調整が必須となります。地域の特性などにより課題も異なるため、その土地の課題や交通機関にフィットした貨客混載の方法を考えなくてはなりません。

貨客混載の最新事例

実現には調整など必要な手配が多くありますが、条件などがうまくフィットすれば貨客混載は物流を維持するための非常に有効な手段となります。最後に、貨客混載に関する最新事例をいくつかご紹介しましょう。

楽天   路線バスを活かした配送を実施

楽天が自社で運営している「Rakuten Express」が岡山県に本社を構える両備ホールディングスと提携し、同社のHD子会社である東備バスのバス路線を活用した貨客混載による荷物の配送を岡山市と瀬戸内市で2020年3月11日から開始しました。楽天初の貨客混載による取り組みです。これは県内にある物流拠点から「Rakuten Express」で配送する荷物を東備バスが通い箱に詰め、西大寺バスセンターから瀬戸内牛窓営業所までバスの座席に置いて輸送、そこからさらに各配送先へは東備バスまたはタクシードライバーが専用配送者で配送するという流れ。

瀬戸内海に面する同地域は小島が多く点在し、傾斜地が多いという地域の特性、そして人口減少が進んでいることから、効率的な配送と路線バス網を活用するためにこの取り組みが実現しました。

西日本鉄道   バスあいのりマルシェ

西日本鉄道では、九州を走る高速バスの空きスペースを活用し、各地の特産物を積み込んで産直販売をするという、「バスあいのりマルシェ」を9月2日から開始します。第一弾は早朝とれたてのオクラやキュウリ、あゆなど、宮崎でとれた44品目の水産物を提供する予定。これは同社と全国の農産品を貨客混載で首都圏に輸送・販売している農業マーケティング会社のアップクオリティとの共同事業です。トラック輸送と比較して、少量の貨物をコストを抑えつつも短時間で運べるというメリットがあると言います。

JR九州  佐川急便と貨客混載の事業化を実現

JR九州と佐川急便が、宅配便の荷物を新幹線で運ぶ貨客混載事業の協業において基本合意に至ったと発表しました。

佐川急便は昨年11月に松浦鉄道と提携し、鉄道貨客混載による総合効率化計画を発表。九州全域の集配効率を向上させるために、列車を活用した貨客混載事業の可能性を模索しているところで、今回は新幹線車内の業務用室の余剰スペースを有効活用したいJR九州と合意し、両社で取り組むことになりました。これによって、佐川急便は車両から発生するCO2の排出量を抑え、ドライバーの運転時間の削減し、業務効率の向上を目指しています。