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自動車NOx・PM法とは?~規制内容や成立の背景まで~

みなさんは、自動車関連法の1つである「自動車NOx・PM法」という法律をご存知でしょうか。

この法律は、道路交通法や道路運送車両法と同様に、社用車を有する企業の管理責任者は知っておくべき法律ですが、内容的にやや難解で分かりにくいため、全容を理解されている方は少ないはず。そこで今回は、自動車NOx・PM法とはそもそもどういう法律なのか、その内容と成立に至った背景について解説。規制対象となる車両や違反した際の罰則規定など、読者の皆さんが抱くであろう疑問にお答えします。

自動車NOx・PM法とは?~規制内容や成立の背景まで~

自動車NOx・PM法とは何か?

「自動車NOx・PM法」とは長すぎる法律名を端的に、わかりやすく表現するための略称であり、正式名称は「自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法」と言います。

構造上、ガソリン・ディーゼル及びLPGを燃料とする自動車はすべて、大気汚染の原因となったり、人体に悪影響を及ぼしかねない窒素酸化物(NOx)や浮遊粒子状物質(PM)を排出したりします。しかしながら、すべてのクルマが対象となるのかと言えばそうではなく、この法律はあくまで特定地域において排出される、NOx・PMの総量を削減することを目的に、排出基準や車種規制を定められた法律です。

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自動車NOx・PM法のポイント1「排出基準」

法律によって規制の対象となるNOx・PM排出量の基準については、大気汚染防止法に基づき車両総重量によって、次のように定められています。

自動車が非常に集中する東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県に関しては、発がん性も指摘されているディーゼル車のPM排出量に関し、自治体が定める「環境確保条例」や「生活環境保全条例」に基づき、下表のとおり別途規制が設けられています。

この排出基準を満たさなければ、対象地域において新車登録ができないほか、すでに使用されている自動車であっても、定められた猶予期間を過ぎるとこの地域内で使用できなくなります。

自動車NOx・PM法のポイント2「車種規制」

この法律はディーゼル車やトラック、バスなどの車両総重量が重いクルマを規制する法律であり、EV・HV・軽自動車、ガソリン普通車はすべて対象外となります。この車種規制についても、排出基準同様に代替えに要する一定の猶予期間が設けられてはいますが、今後購入予定の新車はもちろん、現在使用中である車についても適用されます。

つまり、法律で指定される地域内でディーゼル車を使用している事業者や、物流・運送業者の多数がこの法律の影響を受け、場合によっては近い将来、規制に適合するHV・EV・ガソリン車種への代替えを迫られる…ということです。

自動車NOx・PM法のポイント3「適用される地域」

地球上で暮らす私たちの健康を守るために成立した自動車NOx・PM法ですが、日本全国津々浦々全ての地域において、走行できる車種が規制されるわけではありません。

NOx・PM法は「特定地域における総量の削減」を図るための特措法、分かりやすく言うとコロナ禍のさなかにある現在、地域限定で発動されている、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置と同じようなもの。自動車NOx・PM法が適用されるのは自動車交通が集中し、大気汚染防止法など従来の措置だけでは、NOx・PMによる大気汚染が食い止められないと考えられる地域で、該当するのは下表で示す市区町村です。

首都圏

東京都特別区(23区)、八王子市、立川市、武蔵野市、三鷹市、青梅市、府中市、昭島市、調布市、 町田市、小金井市、小平市、日野市、東村山市、国分寺市、国立市、福生市、狛江市、東大和 市、清瀬市、東久留米市、武蔵村山市、多摩市、稲城市、羽村市、あきる野市、西東京市、瑞 穂町、日の出町
埼玉県さいたま市、川越市、熊谷市、川口市、行田市、所沢市、加須市、本庄市、東松山市、春日部 市、狭山市、羽生市、鴻巣市、深谷市、上尾市、草加市、越谷市、蕨市、戸田市、入間市、鳩 ヶ谷市、朝霞市、志木市、和光市、新座市、桶川市、久喜市、北本市、八潮市、富士見市、上 福岡市、三郷市、蓮田市、坂戸市、幸手市、鶴ヶ島市、日高市、吉川市、伊奈町、吹上町、大 井町、三芳町、川島町、吉見町、上里町、大里町、岡部町、川本町、花園町、騎西町、南河原 村、川里町、宮代町、白岡町、菖蒲町、栗橋町、鷲宮町、杉戸町、松代町、庄和町
千葉県千葉市、市川市、船橋市、松戸市、野田市、佐倉市、習志野市、柏市、市原市、流山市、八千代 市、我孫子市、鎌ヶ谷市、浦安市、四街道市、白井市
神奈川県横浜市、川崎市、横須賀市、平塚市、鎌倉市、藤沢市、小田原市、茅ヶ崎市、逗子市、相模原 市、三浦市、秦野市、厚木市、大和市、伊勢原市、海老名市、座間市、綾瀬市、葉山町、寒川 町、大磯町、二宮町、中井町、大井町、愛川町、城山町

関西圏

大阪府大阪市、堺市、岸和田市、豊中市、池田市、吹田市、泉大津市、高槻市、貝 市、守口市、枚 方市、茨木市、八尾市、泉佐野市、富田林市、寝屋川市、河内長野市、松原市、大東市、和泉 市、箕面市、柏原市、羽曳野市、門真市、摂津市、高石市、藤井寺市、東大阪市、泉南市、四 條畷市、交野市、大阪狭山市、阪南市、島本町、忠岡町、熊取町、田尻町
兵庫県神戸市、姫路市、尼崎市、明石市、西宮市、芦屋市、伊丹市、加古川市、宝塚市、高砂市、川 西市、播磨町、太子町

東海圏

愛知県名古屋市、豊橋市、岡崎市、一宮市、瀬戸市、半田市、春日井市、豊川市、津島市、碧南市、 刈谷市、豊田市(旧藤岡町、旧小原村、旧足助町、旧下山村、旧旭町及び旧稲武町を除く)、 安城市、西尾市、蒲郡市、犬山市、常滑市、江南市、小牧市、稲沢市(旧祖父江町を除く)、東 海市、大府市、知多市、知立市、尾張旭市、高浜市、岩倉市、豊明市、日進市、愛西市(旧立 田村及び旧八開村を除く)、東郷町、長久手町、西枇杷島町、豊山町、師勝町、西春町、春日 町、清洲町、新川町、大口町、扶桑町、七宝町、美和町、甚目寺町、大治町、蟹江町、十四山 村、飛島村、弥富町、阿久比町、東浦町、武豊町、幸田町、三好町、音羽町、小坂井町、御津町
三重県四日市市、桑名市(旧多度町を除く)、鈴鹿市、木曽岬町、朝日町、川越町

自動車NOx・PM法が必要となった背景

2020年10月、臨時国会の所信表明演説において、「2050年までにカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と当時の菅首相が宣言したように、世界は今、温暖化や環境破壊の元凶であるCO²の削減へ向け邁進しています。しかし、大気汚染や環境破壊につながる物質はCO²だけではなく、発がん性の指摘など人体に与える悪影響で言えば、自動車の排気ガスに含まれている窒素酸化物(NOx) や浮遊粒子状物質(PM)の方が深刻です。

日本では1993年12月、排ガス中のNOxは酸性雨が発生する大きな原因として取りざたされました。その総量を半減することを目指し、環境省が主体となって前身となる「自動車NOx法」を制定・施行。しかし、モータリゼーションの普及と発展、大都市圏での交通量激増などの影響により、思ったように削減効果が現れず、なおかつディーゼル車が排出するPM物質による、発がん性などの健康被害への懸念が強まっていきます。こうした背景を受けて、2001年6月、自動車NOx法の改正法として現行の「自動車NOx・PM法」が成立し、首都圏・関西圏・東海圏などの大都市部を対象地域として、使用できる車が制限されるようになったのです。

自動車NOx・PM法に関するQ&A

ここからは車両管理者がこの法律を順守した管理体制を構築できるよう、自動車NOx・PM法に関する質問に対してお答えしましょう。

Q:具体的には、どんな車が規制対象となるのですか?

法律名の通り、交通が集中したことで排出されるNOx・PMの総量が大気汚染につながると危惧される車種が規制の対象となり、バスやトラックなどの業務用車両だけではなくレジャーで活躍するRV車も、一部が対象となる場合があります。一方、RVを含むガソリン普通車と軽自動車はもちろん、個別に免許を必要とする キャタピラー車・ローラー車・フォークリフト・トラクターなどといった、大型・小型特殊自動車は対象外です。

Q:基準を満たしていない車を使用するとどうなりますか?

まず第1に、自動車NOx・PM法で定められている排出基準を満たしていない車は、それぞれに設けられている猶予期間(※使用可能最終日)を過ぎると、対象地域内において新規登録及び移転登録ができなくなります。

※環境省:「自動車NOⅹ・PM法の手引き」を参照

つまり、猶予期間を過ぎると基準を満たしていない車はもれなく、無車検走行をしていることになるため、道路運行車両法により「6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金」に処せられる可能性があります。さらに、各自治体が定めている規制条例にも反することになるため、例えば兵庫県の場合は以下のような対処がとられます。

  • 使用者に対して措置命令
  • 荷主等に対して勧告
  • 違反自動車の運行に対して20万円以下の罰金
  • 違反荷主等の公表

Q:規制対象かどうか調べる方法はありますか?

一番簡単なのは車検証の確認、検査時の点検整備実施状況等を記載することになっている車検の「備考欄」をチェックすれば、排出基準や使用可能最終日などが記載されているので、その車両が対象か対象外か一目でわかります。

【記載例】

  • 適合(対象外)・・・「使用車種規制(NOx・PM)適合」
  • 不適合(規制対象)・・・「この自動車はNOx・PM対策地域内に使用の本拠を置くことができません」「この自動車は平成○○年○○月○○日以降の有効満了日を超えて特定地域内に使用の本拠を置くことができません。」など

その結果、規制対象であることが分かり、かつ車検証に記載されている「使用の本拠の位置」が前述した指定地域に該当する場合、自動車NOx・PM法が適用されるという仕組みになっています。

モビリティデータの収集・分析・可視化で規制順守につなげる

普段から、自社の車両がどれくらい稼働しているのか、どのような運転をしているのか、把握されているでしょうか。毎日ドライバーが安全やエコドライブを心がけるだけでも、排ガスの量を軽減し、さらには燃費向上、コスト削減など、企業にとって多くのメリットが得られますが、適切な安全運転指導や稼働管理ができていなければ、NOxやPMの総量を減らすことは困難かもしれません。

まずは、正確な稼働状況や運転状況を把握するために、車両管理システムを活用してみませんか。

車両管理システムとは?

車両管理システムとは、企業が所有する車両に関する動産情報の管理、運行情報の管理、日報や労務管理など、車両台数の最適化や業務効率向上を目的としたシステムやツールのことを言います。主な機能には、①GPSの位置情報から走行ルートをデータとして記録②車両管理台帳③危険運転の検知とアラート④リアルタイムの位置情報表示⑤自動運転日報作成などがあげられます。

スマートドライブが提供する車両管理システムでは、特許取得済みの独自技術である高性能センサー、「G-Force」を搭載し、急発進・急停止・急ハンドルなどの危険な運転を記録し、安全運転度合いを可視化。今まで見ることができなかった稼働状況、走行ルート、運転のクセが可視化されることで、適切な改善策を見いだすことができるのです。このように、日々の状況を把握し、改善策を落とし込んでいくことはNOxやPMの軽減だけでなく、企業の信頼を勝ち取りつつリスクマネジメントも強化する、有効策の一つだと言えるでしょう。

まとめ

今回解説した自動車NOx・PM法により、同一都道府県の対策地域に本拠を有する対象自動車を30台以上使用する運送事業者等は、自動車管理計画と定期報告書を作成し、管轄の運輸局長に提出することが義務付けられました。

昨今は安全運転の励行などとともに、環境保全へ対する取り組みも自動車を用いる企業・事業者にとって果たさなくてはならないコンプライアンス、社会規範や社会道徳の1つになっています。

車両管理者のこなすべき業務は増え、その責任も年々多くなっていますが、スマートドライブを始めとする車両管理システムを活用することで、法順守のための業務負担を軽減することができます。ぜひ、この機会に導入を検討してみませんか。

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